医療法人の承継では、現在の経営者の子どもや親族などの後継者に承継されるのが一般的に行われます。
しかし、現在多くのクリニックや病院で後継者不足という問題がああり、その数は、全体の6割ともいわれています。
さらに、病院では約5人に1人、クリニックでは約2人に1人が60歳以上であり、早急な対策が必要であると言えます。
実際に医療機関の休廃業や解散件数は年600件もあり、年々増加傾向にあります。
後継者不足の原因としては、次のようなものが考えられます。
- 子どもや親族に後継者となれるものがいない
- 後継者となれるものが医者ではない
- 医師であっても、承継を望んでいない。または、専門分野が異なっており、承継が難しい
医療法人制度の目的の一つは、「地域医療の永続性の確保」ですので、後継者の育成に努め、安易な解散は避けるように求められています。
様々な承継の方法
医療法人の事業承継は、それぞれの条件やご希望により方法が大きく異なります。
その中でも特に重要なポイントとなるのが、「出資持分」の有無です。
出資持分ありの医療法人とは、出資者が出資持分を有する旨を定款で定めている法人であり、社員が退社する際には、その出資持分の払戻しを受けることができます。
事業承継においては、この出資持分を後継者へ引き継ぐことが多く、その評価額が高額となる場合には、相続税や贈与税などの負担が生じる点に注意が必要です。
出資持分ありの医療法人における親族(子など)への承継については、いくつかの方法があり、それぞれ手続きの内容や税負担が異なるため、個別の状況に応じた検討が求められます。
なお、2007年の医療法改正以降は、出資持分ありの医療法人を新たに設立することはできなくなっており、現在新規に設立される医療法人は、すべて出資持分のない法人となっています。もっとも、既存の出資持分ありの医療法人については引き続き存続が認められており、現在でも全体の約6割程度を占めています。
「持分あり」医療法人のとき
持分あり医療法人の承継では、主に次の3つの方法が検討されます。
- 持分を後継者へ移転する
- 持分の払戻しを行う
- 持分を放棄する
いずれの方法も、税務・資金・経営に大きく関わるため、慎重な判断が必要です。
認定医療法人を活用する
認定医療法人とは、出資持分ありの医療法人が将来的に出資持分なしの医療法人へ円滑に移行するための制度です。これに沿って、出資持分を放棄すると贈与税や相続税が免除されるなどの特徴があります。
これにより、親族承継を促進され、医療法人の安定経営にもつながることとなります。
「持分なし」の医療法人のとき
「持分なし」医療法人は、税務面の負担が比較的少ない一方で、経営体制の設計や合意形成が承継の成否を左右します。
- 持分がないため、財産の移転ではなく「経営の引継ぎ」が中心
- 役員や社員の構成変更が承継のポイントとなる
- 関係者間の合意形成が重要
後継者がいない場合の方法
経営者に子どもや親族などの後継者がいない場合、次のような選択が考えられます。
- クリニックの廃業
- 第三者への承継
- 事業売却やM&A
このうち、「クリニックの廃業」は、地域医療の永続性を鑑みると、一番避けたいと思われる選択です。
その他の方法についても、すぐにできるものではないので、早い段階からの準備が必要です。
クリニックの廃業
施設や医療機器が老朽化している、後継者を探すの時間がないなどの理由により、残念ながら廃業する場合もあります。
しかし、廃業といっても、その運営方法により手続きが変わり、また時間や費用もかかります。
第三者への承継
家族や親族への承継が難しい場合、第三者への承継が考えられます。
事業売却やM&A
病院やクリニックを他の事業者に売却する方法です。
株式会社などでもよく見られますが、病院などの医療法人でも行われています。
