持分あり医療法人における「持分」とは、出資者が医療法人に対する財産権のことです。
「定款の定めるところにより、出資額に応じて払い戻し又は残余財産の分配を受ける権利」と定義されており、退社時や相続時に請求することができます。
例えば、AさんとBさんが1,000万円ずつ出資し、持分を50%ずつとする医療法人を設立したとします。
10数年後、Aさんが退社することとなったため、持分の請求がされた場合、出資した1,000万円を返還するのではありません。
その医療法人がその時に1億円の資産をもつまでに成長していたら、Aさんの持分はその半分となる5,000万円になります。
このように、法人の成長に応じて払い戻し額が増大する点が、「持分あり医療法人」の大きな特徴であり、資金繰りや事業継続に影響を与える要因となります。
ただし、「持分あり」医療法人は、平成19年(2004円)4月1日以降は、第5次医療法改正により新たに設立できなくなりました。
それ以降に設立された医療法人は、「持分なし」医療法人となります。
「持分なし」医療法人の場合、先ほどのAさんの例で言いますと、支払わなくてはならない金額がなくなります。
最初に出資された1,000万円さえも返還する必要がありまません。
(※基金制度を採用している場合を除きます)
持分あり医療法人の承継
持分あり医療法人の承継には、主に以下の方法があります。
- 出資持分を後継者へ移転する方法
- 出資持分の払い戻しをする方法
- 出資持分を放棄する方法
持分は、贈与や譲渡、相続により移転することが可能であり、親族内承継では生前贈与や相続による承継、第三者承継では譲渡による引継ぎが検討されます。
また、一度に移転するだけでなく、複数回に分けて段階的に承継するケースもあります。
移転にあたっては、持分の評価が重要なポイントとなり、評価額によっては相続税・贈与税の負担が大きくなるため、事前の試算と対策が不可欠です。
さらに、持分の移転自体は直ちに社員構成や議決権に影響するものではありませんが、実務上は社員の入替や役員変更とあわせて行われることが多いため、法人の意思決定体制や支配関係に影響を与える場合があります。
このように、持分移転による承継は、税務・法務・運営面を踏まえた総合的な検討が重要となります。
持分を後継者へ移転する場合
持分を後継者に移転する方法としては、贈与、譲渡、または、相続による場合が考えられます。
贈与や譲渡のときは、譲渡所得税や贈与税が発生し、相続の時は、相続税が発生するなど、持分の評価額によっては高額になることがあります。
その場合、それらの税金を納めるため、持分を現金化することが考えられます。
医療法人は、そのために経営に影響を受ける可能性を持っています。
持分を払い戻す場合
出資者は、退社時に医療法人に対して持分に応じた財産の払戻しを請求することができます。
この場合、法人には支払義務が生じるため、払戻額によっては資金繰りや経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。
持分を放棄する場合
出資者が持分を放棄することもできます。
ただし、この場合は、放棄した出資者以外の出資者が贈与を受けたこととみなされ、贈与税が課税されることになります。
他の出資者が納税資金を得るために、持分の払い戻し請求をする可能性がうまれます。
これを避けるために、出資者全員が持分を放棄した場合には、医療法人に対する贈与とみなされ、医療法人が贈与税が生じることとなります。
認定医療法人制度
このように持分によるリスクを回避するために、「持分あり」医療法人である医療法人は、「持分なし」医療法人への移行が勧められています。
しかし、持分の放棄や払い戻しによって持分を行う過程において、贈与税や相続税などの税負担が発生する可能性があります。
そこで、移行にあたってのこれらの負担を軽減するため、厚生労働大臣が認定し、税制優遇等の支援を行う移行促進策(移行計画認定制度)が講じられています。
この厚生労働大臣の認定を受けた医療法人を「認定医療法人」と呼ばれます。
認定医療法人は、税制優遇や融資の支援を受けることができますが、認定日から5年を超えない範囲で移行の期限を定める他、その期限内に持分なし医療法人への移行を完了するための有効かつ適切な計画であることが求められます。
また、移行計画認定制度の実施期間は、令和11年12月31日までであり、それまでに厚生労働大臣の認定を受ける必要があります。
認定医療法人に対する支援の内容
認定医療法人に対しては、次のような支援が用意されています。
- 出資者に対する相続税の猶予・免除
- 出資者間のみなし贈与税の猶予・免除
- 医療法人に対するみなし贈与税の課税の特例
- 持分の払い戻しが生じたときの融資制度
これらにより、持分の放棄や贈与などによって生じる相続税や贈与税などを猶予や免除されることとなり、リスクを減らしつつ、「持分なし」医療法人へ移行させることができるようになります。
まずは現状の整理から
持分あり医療法人の承継は、次のような状況によって結果が大きく変わってきます。
- どの方法を選ぶか
- どのタイミングで行うか
- 税負担や資金への影響をどう抑えるか
当事務所では、現状の把握から最適な承継方法のご提案、手続きまで一貫してサポートしております。
「何から検討すべきか分からない」という段階でも構いません。
まずはお気軽にご相談ください。
